力で平和は築けない(12月19日付朝刊1面「米『力による平和』回帰」に思う)
トランプ政権が発表する国家安全保障戦略で、国防予算を大幅に増額し、軍事力を増強することで、米国の脅威に対抗する方針を明確に打ち出す。オバマ前政権が、対話や外交で米国の指導力を発揮するとした戦力とは正反対。何でもオバマ政権の逆をやりたがるトランプ氏の性格通りだが、これは無意味で危険だ。イアン・ブレマー氏がGゼロという言葉で、どの国も単独で政治的経済的な覇権を握ることが出来ない世界が到来したことを表現した例を引くまでもなく、米国が軍事力で世界を抑えられる時代は終わった。北朝鮮の脅威に力だけでは対抗しあぐねている事実ひとつとっても、それは明らかだ。昨年国連の歴史上初めて、核兵器の禁止決議が行われたが、だからこそ世界の国々は、力ではなく理性が支配する国際秩序の模索を始めている。米国は米ソ対立の一時期に自由主義のリーダーとして、力だけでなく理念的にも世界をリードしたように、今こそ自ら力一辺倒の戦略を捨てて理念重視に回帰し、この流れを大きくすべきではないか。安倍首相もトランプ政権と世界の仲介役を自認するのであれば、米国の求めに応じて戦力増強を分担するのでなく、世界の流れをトランプ氏に悟らせる役割を発揮してほしい。
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