キレイにそろった野菜が問題❗️(3月11日付朝刊15面「農作物栽培の堆肥利用」に思う)

キレイな緑色の畑は、自然の一部のようにも見えるが、実は自然とはかけ離れた世界だ。本記事では不耕起栽培が紹介されている。耕さない農業のこと。耕して作物を植えるというのは、農業に必須のイロハのように思われるが、実はそうではない。耕し過ぎで表土が相当失われてしまった米国などでは不耕起栽培が広がっているという。
作物を植える度に畑を耕すと、土中の生態系が破壊されてしまう。土中には植物の根を中心に、根と共生する菌根菌、その周囲でさらに共生する菌類やバクテリア。それらをさらに遠くまで繋ぐ糸状菌のネットワークが隙間なく張り巡らされ、その長さは一坪程度の土地でも、地球一周分にも達することがあるという。

野菜を含めて、地上の植物は見えない土中ネットワークの恩恵を受け、葉や茎を広げて生きているが、恩恵の見返りに光合成で得たエネルギーの1/3程度を根から土中に還元しているという。その土中ネットワークがあってこそ野菜も育つのに、耕すことでネットワークを根絶やしにしてしまうのはいかにももったいない。

なぜ耕すのか?それは消費者が、より大きく立派に見え、形や大きさもそろい、虫食いのない野菜を求めるからだ。耕すことで、栄養の循環や周辺環境を人間がコントロールし、規格化された工業製品のような農産物を製造し易くなる。しかしその付けは、地球温暖化ガスの排出、表土の流出、余剰栄養の流れ込みによる河川や海の水質悪化をもたらす。

小さくて、不ぞろいで、虫が食っていても、自然の味がする野菜を消費者が受け入れてくれれば、不耕起栽培には大きな可能性が開ける。よく考えてみたい。

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